貝掃除 と 母貝づくりの秘密
桜の季節も終わり、水温、気温ともに上昇してくると本格的な貝掃除の作業が始まります。
冬場、貝に付いたフジツボやホヤなどの付着物をきれいに取り除き、再び海に戻していきます。
貝掃除は、一つ一つを手作業で行うので根気と体力を使いますが、貝の健康状態を保つためにとても大事な作業です。
さて今回は、上村真珠の母貝づくりの秘密に迫ります。
真珠養殖において、母貝づくりはとても大切な作業となります。
母貝を人の手によって掛け合わせてつくることを、人工採苗(じんこうさいびょう)と言います。
実は、世界で初めて人工採苗に成功したのが、ほかでもない上村真珠なのです。今から40年以上も前に、壱岐の半城湾に適したアコヤ貝を作ることに成功し、そのノウハウはしっかりと受け継がれています。
特に上村真珠では、研究を積み重ね自社で優秀な貝だけを掛け合わせ、より優秀な母貝を生産しています。
上村真珠のつくる真珠の最大の特徴は、強い輝き(テリ)と真珠層の厚み(巻き)そして透明感です。
特に純国産ならではの透明感のある輝きは、宝石としてふさわしい品格を備えています。
日本では一時期、海外のアコヤ貝との掛け合わせた母貝が多く出回り、品質の低下を招いてしまいました。そんな中で、上村真珠が純国産を守り続けられたのは、自社で貝を生産することができたからです。
貝を掛け合わせてから、その結果が分かる真珠の収穫までは、4年から5年かかります。貝づくりは責任重大であるとともに、データ管理が大変重要です。この母貝づくりは真珠養殖の技術において核心的な部分なので、通常は非公開なのですが、今回は特別に幾つかの画像をご紹介いたします。
掛け合わせをするための巨大な水槽
上村社長のお話だと、大きな水槽で育てることで、ゆったりとした性格のよい?貝ができるそうです。
受精させると億単位の貝の赤ちゃんが生まれます。生まれたての貝はまだ幼生なので動き回っています。2週間くらいで貝の形となり周りに付着します。この時に付着させるためのコレクター(黒い網状のもの)を入れ、貝の赤ちゃんを集めます。
貝の赤ちゃんのエサは植物性プランクトン。億単位の貝の赤ちゃんのエサは膨大な量が必要となります。
プランクトンを大量に培養して貝の赤ちゃんに与えるのですが、どんなプランクトンをどれだけ食べるのか、40年以上前から研究を重ねた結果現在では技術が確立されています。
先ほどの巨大な水槽である程度の大きさまで育て、そのあと網目の細かいカゴに入れて海に出していきます。
優秀な貝を選抜する技術も大切なノウハウの一つです。
このように上村真珠のアコヤ貝は、きれいな真珠を作るためのエリート集団といえるようになったのです。