今年も一年を通して大きなトラブルもなく順調に貝が育ってくれたおかげで、無事浜揚げを終えることができました。
真珠養殖は自然相手の仕事となりますので、その年の天候や海の状態などで結果が大きく左右されます。真珠づくりはまさに自然と人と貝とのコラボレーションの賜物といえます。
今回は「和奏」を育んでいる自然環境、壱岐の半城湾(はんせいわん)について紹介していきましょう。
真珠の養殖はどのような海でもうまくできるのではなく、アコヤ貝を育てるのに適した環境があります。
一つは穏やかな海でありながら水の循環がよいこと、そして遠浅ではなく、切り立ったタイプの海岸線、いわゆるリアス式海岸というタイプの海が真珠の養殖に適しています。
そして、水質がきれいであることは言うまでもありません。
半城湾は、これらの条件を満たす環境を備えているのです。
半城湾は、東京ドーム約70個分の広さを持っています。
通常の湾でしたら複数の漁業関連の業者がそれぞれの漁や養殖をしていますが、半城湾では真珠養殖以外の漁業は行われていません。
他の魚の養殖や、生態系を崩すような漁は海の環境を変えてしまう可能性があります。このような危険を避けるため、真珠養殖以外の漁業はできない様、真珠の養殖に適した海を守るためこの湾の漁業権を全て上村真珠が持っているのです。
また潮の流れは、ちょっとした地形の変化で大きく変わってしまいます。そのため、半城湾の海岸線は自然のまま残されています。
もう一つ半城湾の特徴として、川が流れ込んでいないということが挙げられます。
川は山からの栄養分を海へと運ぶというプラスの役割もありますが、逆に人間の生活排水や工場などの排水が流れ込み海の栄養バランスを崩す可能性もあり、決して良いことばかりではありません。一度失われた自然のバランスを戻すには、長い年月が必要となります。
半城湾では、雨が降った時に多くの養分が海に流れ込むよう、自然保護にも取り組んでいるのです。
このようにきれいな真珠ができる裏側には、目に見えない大きな努力があるということを理解しておくと、真珠に対する愛着もさらに湧いてくるのではないでしょうか。